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「自分のハガキが読まれた!」深夜ラジオに救われた不登校の夜

認められたというか「自分が存在しているんだ」という感じ

 

 いま、放送作家としてラジオに関わっていて感じるのは、いいパーソナリティは、ラジオの向こう側のリスナーひとりひとりに語りかけるように話しているということです。僕もラジオを毎晩聞いていた当時は、ラジカセが放送局の局舎にみえていました。そこに「こびと」がいるような気がしてくるんです。そのこびとたちがラジカセの中で動き回って番組を作り、僕だけのためにやってくれていると想像していました。だからラジオの世界が心地よかったんじゃないかなと思います。

 高校時代、妄想のラジオ局「東放送」を立ち上げていました。高校が「神宮東1丁目」にあったことから、学校を「東放送神宮放送センター」とし、「学校に登校する」ではなく「パーソナリティとして出勤」するという設定で学校に行っていました。高校に楽しく通い続けるための作戦です。あの頃は本気だった。

「東放送」はテレビ局も持っていたので、近くの公園は「東放送文化公園放送センター」としてバラエティーを撮っていたし、近くのレンタルビデオ店は「東放送メディアシティ」として、そこではドラマを撮っていた。「神宮放送センター」(学校)と、「文化公園放送センター」(公園)、「メディアシティ放送センター」(レンタルビデオ店)を循環するバスもあった。 学校にいても、そこは「東放送神宮放送センター」なので、職員室はアナウンス室、体育館はイーストスタジオ、などと細かく設定していたし、「文化公園放送センター」ではフェスもやってるイメージもあった。自分の中で世界ができあがっていました。

 進学した定時制高校のクラスには「やんちゃ」をしたことのある同級生もいれば、70歳くらいのおばあちゃんもいたし、コンビニでアルバイトをしていた24歳の同級生もいました。36歳くらいの女性もいたかな。そんな環境を「おいしい」と思っていましたね。自分が10代なのに、大人たちといるのはすごくたのしかった。不登校経験など何かしら悩みを抱えた人もいたし、普通の大人もいて、ある意味「社会」でした。僕は、養護学校を卒業していて、名簿の出身中学のところには養護学校って書いてある。でも誰も「病気なの?」とかは聞いてこなかったんですね。みんなそれぞれ苦労しているから、「他人に干渉するのはやめよう」という雰囲気があった。それが心地よかったですね。面倒なこともあったけど、居心地はよかった。高校時代のラジオ局の空想は、そんな生活をより楽しくするためのものでした。

 一方で、当時は「地元」がつらかったという思いもあります。あと何日で卒業ってカウントダウンしていたくらいです。僕の場合は、地元がしんどかった。引きこもりだからといって後ろ指さされることはないけど、町が狭く生きづらかった。

 同じように地元がしんどいと思っている人に言えるのは、「旅をしてみて」ということかな。外に出て、好きなものを探してみることも、いい経験になると思います。

寺坂直毅(てらさか・なおき)

1980年生まれ。放送作家。『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)、『うたコン』(NHK総合)などを構成。宮崎県で高校卒業までを過ごし、専門学校入学のため上京。デパートの知識が豊富で、『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)の著書もある。

Twitter:@terasakanaoki

(『生きづらさを抱えるきみへ』withnews編集部 より)

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『生きづらさを抱えるきみへ』
著者:withnews編集部

 

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2014年に朝日新聞社がスタートしたニュースサイト「withnews」内の1コーナーが「#withyou」です。この#withyouは2018年4月に始まった「生きづらさを抱える10代」に向けた企画で、「いじめ」や「不登校」、「DV」などを経験したことのある著名人(タレント、ミュージシャン、YouTuber、クリエイター等)が自らの体験談をサイトに掲載したものです。その体験談をひとつにまとめたのが本書。新生活が始まる中、「学校に行きたくない」「死にたい」といった悩みを抱え苦しむ人に、著名人たちが「自分も学校にいかなかった」「自分も不登校生活をしていたけど、今はしっかりと生活できている」「学校に行くだけがすべてじゃない」「好きなことをずっとやり続けていれば大人になっても暮らしていける」といった“安心できる”提案をしています。学校や友達付き合いに悩んでいる人に“学校に行きたくなければ行かなくても全然大丈夫”“今の時代、生きていく道はたくさんある。自ら死を選ばないで”という輪を広げていくことをいちばんの目的とした一冊です。

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